糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫
DIABETIC RETINOPATHY / DIABETIC MACULAR EDEMA
DIABETIC RETINOPATHY / DIABETIC MACULAR EDEMA
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、毛細血管が目詰まりを起こし、網膜が酸欠状態になります。
その結果、網膜出血や黄斑浮腫、新生血管などの網膜障害がでます。初期は自覚症状はありませんが、 進行すると失明することがあります。糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症の一つです。
糖尿病網膜症
糖尿病腎症
神経障害
糖尿病で高血糖状態が続くと、毛細血管が目詰まりを起こします。
その結果、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、神経障害が発生します。糖尿病網膜症は、日本人の失明原因で3番目に多い病気です。
Morizane, Y. et al.:Jpn J Ophthalmol 63(1):26, 2019
視力低下、飛蚊症等が糖尿病網膜症の症状です。悪化すると網膜剥離や血管新生緑内障になり
失明することがあります。かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、 まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。糖尿病網膜症は網膜の血管が徐々に壊れていくことに伴って以下の4段階を
経て進行します。単純網膜症や増殖前網膜症では、糖尿病黄斑浮腫の合併を伴わない場合、 自覚症状はほとんどありません。増殖網膜症では視力障害を 伴うことが多く、治療をしない場合失明する可能性が高いです。病気の進行によって治療法は異なり、早期に治療を始めるほど
負担の小さな方法で視力障害や失明を防ぐことができます。増殖前網膜症や増殖網膜症の段階で実施します。失明を防ぐ目的で実施します。
眼の虚血状態を解消して、新生血管の発生や増殖を抑えます。 ただし、病気になる前の網膜の状態や視力に戻るわけではありません。網膜剥離や硝子体出血に対して実施します。失明を防ぐ目的で実施します。
ただし、病気になる前の網膜の状態や視力に戻るわけではありません。糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、網膜の血管が痛んで、血液成分が漏れ出てしまいます。
その結果、黄斑がむくんでしまい、視力低下やゆがみ等の症状が出ます。黄斑は、網膜の中でも視力をつかさどる重要な細胞が集中している中心部で、
物の形、大きさ、色、 奥ゆきなど光の情報の大半を識別しています。糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の合併症として黄斑部がむくむ病気です。
糖尿病網膜症の病期に関係なく発生しますが、網膜症の状態が悪いほど 合併する頻度は高いです。正常
糖尿病黄斑浮腫
視力低下やかすみ、変視症(ものがゆがんでみえる)等です。
視力低下・かすみ
変視症
糖尿病黄斑浮腫の治療は、注射、レーザー、手術になります。
血管からの血液や血液成分の漏れを抑制する薬を眼内に注射します。
ケナコルトはステロイドの一種で、炎症を抑え、血管から水分が
漏れ出る状態を改善する作用があります。この薬剤をテノン嚢下に注射します。細小血管や毛細血管瘤から血液成分が漏れ出るのを防ぐ直接光凝固と
格子状光凝固があり、単独または併用で行われます。黄斑浮腫の原因となる硝子体の網膜への牽引やサイトカインを除去したり、
硝子体内の酸素分圧を高めて、黄斑浮腫を改善させます。 ただし、病気になる前の網膜の状態や視力に戻るわけではありません。糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても、眼科を受診しましょう。悪化すると失明しますが、かなり悪化するまで症状がありません。ご自身の眼を守るためには、定期診察を受けましょう。診察間隔は、 糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫の状態で決まります。
視力
眼圧
細隙灯顕微鏡
眼底検査(散瞳)
OCT(光干渉断層計)
眼底写真(オプトス(超広角走査型レーザー検眼鏡))
その他(アムスラー、蛍光眼底造影検査など)
糖尿病網膜症の診察では散瞳薬を使用するため、瞳孔が大きくなって
まぶしく感じます。また、手元が見えづらくなります。散瞳薬の効果は5~6時間続きます。 来院時は、ご自身で運転しないことをお勧めします。※眼や糖尿病の状態により診察間隔は変わります。
病期 | 診察間隔 | 眼底写真 |
---|---|---|
網膜症無し | 6か月~12か月毎 | |
単純網膜症 | 3か月~6か月毎 | |
増殖前網膜症 | 1か月~2か月毎 | |
増殖網膜症 | 2週間~1か月毎 |
黄斑浮腫の有無 | 診察間隔 | OCT |
---|---|---|
黄斑浮腫無し | 網膜症の診察間隔で | |
黄斑浮腫あり | 1か月~2か月毎 |
糖尿病網膜症が悪化すると、新生血管や軟性白斑など網膜の酸欠状態(虚血)を示す所見が出現します。汎網膜光凝固術は、網膜をレーザーで凝固することで、網膜の虚血状態を解消し、
失明を防ぐ効果があります。糖尿病網膜症の程度が、増殖前網膜症、増殖網膜症になった段階で汎網膜光凝固術の適応になります。
※ご家族同席の上で説明を受けることをお勧めします。
レーザースケジュール例
片眼ずつ交互にレーザーをする場合(右眼からスタートの場合)
両眼を同じ日にレーザーをする場合
汎網膜光凝固術では散瞳薬を使用するため、瞳孔が大きくなってまぶしく感じます。 また、手元が見えづらくなります。散瞳薬の効果は5~6時間続きます。来院時は、 ご自身で運転しないことをお勧めします。
検査、散瞳、診察後にレーザー治療を行います。点眼麻酔後、レーザー用コンタクトレンズを 眼にのせて、レーザーを行います。片眼1回あたりのレーザーの所要時間は約10分です。
レーザー終了後、次回の予約を取ります。糖尿病黄斑浮腫は、毛細血管から血液成分が漏れ出すのを促すVEGF(血管内皮増殖因子)という物質によって引き起こされます。抗VEGF薬硝子体内注射は、このVEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射し、血液成分の漏れを減らし糖尿病黄斑浮腫を治療する方法です。
視力をおびやかす糖尿病黄斑浮腫が認められる場合、抗VEGF薬硝子体内注射の適応になります。
※ご家族同席の上で説明を受けることをお勧めします。
モキシフロキサシン(抗菌薬)
1日4回
朝・昼・夕・寝る前
※点眼は1回1滴まで
説明日に処方された抗菌薬の点眼を開始します
※普段の点眼薬は今まで通り継続
※手術前は運動・お食事・入浴など生活に制限はありません。
モキシフロキサシン(抗菌薬)
1日4回
朝・昼・夕・寝る前
※点眼は1回1滴まで
糖尿病網膜症は、糖尿病の発症期間、重症度と密接な関係があることはわかっています。糖尿病発症後20年超では、75%の人が糖尿病網膜症を発症していると報告されています。また、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)の値に関係なく、糖尿病になってから5~10年で、急激に糖尿病網膜症の発症のリスクが高くなることが報告されています。ただし、どれくらいの期間で糖尿病網膜症が発症するかはわかりません。自覚症状がなくても、糖尿病になったら、眼科で定期的に眼底診察を受けましょう。
糖尿病で合併する眼の病気は、
①糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫
②白内障
③虹彩毛様体炎
④血管新生緑内障、虹彩ルベオーシス
⑤糖尿病性角膜障害
などがあり、失明のリスクが高い病気も含まれています。
糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の進行にかかわりなく発症します。
糖尿病網膜症が進行するほど、糖尿病黄斑浮腫が発症しやすくなるという報告があります。ただし、糖尿病網膜症になったから、必ず糖尿病黄斑浮腫が発症するわけではありません。
血糖値が良好でも、眼底検査を受けることをお勧めします。
糖尿病網膜症が悪化していても、糖尿病黄斑浮腫や硝子体出血がなければ、自覚症状が出ない場合が多いからです。自覚症状が出るような状態ですと、失明手前の段階まで糖尿病網膜症が進んでしまっていることが多いです。
網膜光凝固術は、糖尿病網膜症で失明をしないようにするための治療です。
視力改善効果は期待できません。
眼底カメラでは、見える範囲が狭く、網膜全体の約15%しか撮影できないため、糖尿病網膜症の変化を見逃すことが多いです。眼科で散瞳して眼底検査をすることで、網膜全体の変化が確認できます。
糖尿病になったら、眼底カメラだけでなく、眼科での定期診察を受けることをお勧めします。